十八史略007巻一五帝:帝尭陶唐氏(2)

鼓腹撃壌(コフクゲキジョウ)

十八史略・原文

治天下五十年、不知天下冶歟、不治歟、億兆願戴己歟、不願戴己歟。問左右不知。問外朝不知。問在野不知。乃微服游於康衢、聞童謠。曰、立我烝民、莫匪爾極。不識不知、順帝之則。有老人、含哺皷腹、擊壤而歌曰、日出而作、日入而息、鑿井而飮、畊田而食。帝力何有於我哉。

十八史略・書き下し

天下を治むること五十年、天下冶まる歟、治まら不る歟、億兆己を戴くを願う歟、己を戴くを願わ不る歟を知ら不。左右に問うも知ら不。外朝に問うも知ら不。在野に問うも知ら不。

乃ち服を微かにして康衢いちまち於游び、わらべうたを聞く。曰く、我がもろ民を立つる、なんじむねあらざる莫し。識ら不知ら不、帝之則に順うと。老人有り、哺を含みて腹を鼓ち、壌を撃ち而歌いて曰く、日出で而はたらき、日入り而息う、井をうがち而飲み、田をたがやして而食う。帝の力、何ぞ我於有らん哉と。

十八史略・現代語訳

尭は天下を五十年統治したが、天下が冶まっているかいないか、民衆が自分を君主に就けたいと願っているかどうか、分からなかった。そこで側近に聞いたが知らなかった。政府の役人に聞いたが知らなかった。民間の者に聞いたが知らなかった。

そこで尭は服装を粗末にして目立たないようにし、盛り場に出かけて探ろうとしたところ、子供の歌を聴いた。「我ら万民の生活を成り立たせているのは、あのお方のお力によらないものはない。思わないうちに知らないうちに、みかどのお触れに従っているからだ。」

また老人たちがいて、ある者は口に食べ物を含んだまま腹を叩き、ある者は畑を耕しては歌っていた。「日が出て働き、沈んで休む。井戸を掘って飲み、耕して食べる。みかどのお力は、ワシらには関係ない。」

十八史略・訳注

億兆:多くの人民。万民。

外朝:帝王の私的な生活空間である内朝に対して、公的な政務の場。政府。

微服:通常は「ビフク」と音読みする。目立たない服装をする。

康衢:=康達。四方八方に通じる道路。往来の激しい大通りのこと。「荘」は、六方に通じた道。「達」は、四通八達の意。「衢」は、四つつじ。

烝民:通常は「ジョウミン」と音読みする。もろもろの人民。

極:しん張り。しんになる強い力。強い人格。「莫匪爾極=爾の極に匪ざるはなし」〔詩経・周頌・思文〕

哺:口中にふくんだ食べ物。

含哺皷腹:クチャクチャと食べながら一杯になった腹鼓を打つというのは、食糧が十分にあることの譬え。

壌:すき返してまぜた柔らかい土。

擊壤:壌(土製の楽器)をうつ。天下太平で、民衆が生活を楽しんでいることのたとえ。「壌」については、ほかに、土くれ、また、遊びに使う、木製のくつのようなもの、などの説がある。「時有撃壌老農夫=時に撃壌の老農夫有り」〔白居易・驃国楽〕

畊:耕の異体字。

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