十八史略008巻一五帝:帝尭陶唐氏(3)

華山

十八史略・原文

觀于華。華封人曰、嘻、請祝聖人。使聖人壽冨多男子。堯曰、辭。夛男子則多懼。冨則多亊。壽則多辱。封人曰、天生萬民、必授之職。夛男子而授之職、何懼之有。冨而使人分之、何亊之有。天下有道、與物皆昌、天下無道、修德就閒、千歲厭世、去而上僊、乘彼白雲、至于帝鄕、何辱之有。堯立七十年、有九年之水。使鯀治之、九載弗績。堯老倦于勤、四嶽擧舜。攝行天下事。堯子丹朱不肖。乃薦舜於天。堯崩、舜卽位。

十八史略・書き下し

華于観る。華の封人曰く、ああ、請うらくは聖人を祝わん。聖人を使て寿いのちながく、富みて男子多からしめんことをと。尭曰く、辞めよ。男子多からば則ち懼れ多し。富まば則ち事多し。寿からば則ちはぢ多しと。

封人曰く、天の万民を生むや、必ず之に職を授く。男子多くし而之に職を授かば、何の懼れか之れ有らん。富み而人を使て之を分かたしまば、何の事か之れ有らん。天下道有らば、物ともに皆なさかえ、天下道無からば、徳を修めてひまに就き、千歳世を厭い、去り而上に僊り、彼の白雲に乗りて、かみの郷于至らば、何の辱か之れ有らんと。

尭立ちて七十年、九年之でみず有り。鯀を使て之を治めしむも、九載いさおしあら

尭老いて勤め于倦み、四岳舜を挙ぐ。天下の事を摂り行わしむ。尭の子丹朱不。乃ち舜を天於薦む。尭崩じて、舜位に即く。

十八史略・現代語訳

尭が華山に出かけた。ふもとの番人が言った。「これはこれは。どうかあなた様を祝わせて下さい。あなた様のお命が長いように、富んで多くの男の子に恵まれますように。」尭が言った。「やめよ。男子が多ければ心配事が増える。富めば面倒ごとが増える。長生きすれば恥が増える。」

番人「天は万人をこの世に生まれさせると、必ず職を授けます。男の子が多ければ仕事を与えればいいではありませんか。何の心配事があるでしょう。富んだら人々に配って分け合えさせれば、何の面倒ごとがあるでしょう。天下がまともなら、万物と共に繁栄を喜び、まともでないなら、人格を磨いて暇を楽しみ、千年に至るほど長く世の中と交わりを断ち、世を去って天上に昇り、あの白雲に乗って神のさとに行けば、何の恥があるでしょうか。」

尭が即位して七十年、九年間も続く洪水が起こり、コンに命じて治水させたが、九年の間効果がなかった。
試鯀治水図 欽定書経図説

尭は年老いて仕事がイヤになったところ、四方の総督が舜を推薦した。そこで天下の政事を取り行わせた。尭の子の丹朱は、親に似ない出来損ないだった。そこで舜を王として天に推薦した。尭が世を去り、舜が王位に即いた。

十八史略・訳注

華:=華山。陝西省にある名山。

封人:封は行き来を阻む土盛り、転じて関所。封人は関所の番人。

嘻:喜ばしいことを対象に沸き起こる感動詞。喜は「チュウ(ごちそう)+口」の会意文字で、おいしそうな食事を前にして喜ぶさま。嘻は「口+(音符)喜」で、ひひと声をたてて喜ぶこと。

聖人:原義は耳も口も達者な万能の人だが、後世になるとキリスト教の聖人に近くなり、最も高い人徳を身につけ、知恵のすぐれた人を意味した。

何懼之有:「何有懼」の倒置で、懼を強調した言い方。

帝鄕:ここでの帝は、天帝=天の主宰神を指す。

四嶽:四方に配置された地方長官。臣下の一人という説もある。
四岳挙舜図 欽定書経図説

不肖:”似ていない”ことだが、親や聖人に似ていないという事で、”出来損ない”を意味する。

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