十八史略003巻一三皇:黄帝軒轅氏(1)

黄帝軒轅氏

十八史略・原文

黃帝公孫姓、又曰、姬姓。名軒轅。有熊國君少典子也。母見大電繞北斗樞星、感而生帝。炎帝丗衰、諸侯相侵伐。軒轅乃習用干戈、以征不享。諸侯咸歸之。與炎帝戰于阪泉之埜克之。蚩尤作亂。其人銅鐵額、能作大霧。軒轅作指南車、與蚩尤戰於涿鹿之埜禽之。遂代炎帝爲天子。土德王。以雲紀官、爲雲師。作舟車以濟不通。得風后爲相、力牧爲將。受河圖。見日月星辰之象、始有星官之書。師大撓占斗建作甲子。容成造曆、隸首作算數。伶倫取嶰谷之竹、制十二律筩。以聽鳳鳴、雄鳴六、雌鳴六、以黃鐘之宮。生六律六呂、以候氣應、鑄十二鐘、以和五音。

十八史略・書き下し

黄帝、姓は公孫、又た曰く、姓は姫と。名は軒轅。有熊国の君少典の子也。母、大電の北斗の枢星を繞るを見て、感じ而帝を生む。

炎帝の世衰え、諸侯相い侵し伐つ。軒轅乃ち干戈を用いるを習い、以てすすめ不るを征つ。諸侯咸な之に帰す。炎帝与坂泉之野于戦い、之に克つ。蚩尤乱を作す。其人銅鉄の額、能く大霧をおこす。軒轅指南車を作り、蚩尤与涿鹿之野於戦い、之を禽う。遂に炎帝に代りて天子と為る。

土徳の王たり。雲を以て官を紀し、雲師と為す。舟車を作りて以て通ぜ不るを済す。風后を得て相と為し、力牧、将と為す。河図を受く。日月星辰之象を見て、始めて星官之書をつくる。

師大撓、斗の建つるを占いて甲子を作る。容成、暦を造り、隷首、算数を作る。伶倫、嶰谷之竹を取りて、十二律の筩をつくる。鳳の鳴くを聴くを以て、雄鳴六たり、雌鳴六たり、以て黄鐘之宮たり。六律六呂をつくり、以て気の応ずるをうかがい、十二鐘を鋳て、以て五音を和す。

十八史略・現代語訳

黄帝の姓は公孫である。また、姓ともいう。名は軒エン。有ユウ国の君主、少典の子である。その母親が、大きな稲光が北斗星の中心星を取り巻いているのを見て、何かに感じて黄帝を生んだ。

炎帝の世が衰えて、諸侯が相いに侵攻しあった。そこで軒轅も軍事演習を行った上で、従わない者を征伐した。諸侯は全て黄帝に服従した。さらに炎帝と坂泉の野で戦い、勝利した。するとユウが乱を起こした。その人物は額が銅鉄で出来ており、大霧を起こすことが出来た。軒轅は指南車を作って、蚩尤と涿タク鹿ロクの野で戦い、これを捕らえた。その結果、炎帝に代って天子となった。

土の力によった王だった。官職に雲を名付けて呼び、長官を雲師と呼んだ。舟や車を作って、行き来できなかった道を通じさせた。風后を召し抱えて宰相に任じ、力牧を将軍に任じた。龍馬がもたらした河図を受け継いだ。太陽・月・星座の形を見て、初めて天文書を作った。

楽師の大トウが、北斗星の向き先を観測して十干十二支を作った。容成は暦を造り、隷首は算術法を作った。伶倫は谷の竹を取って、十二音階の笛を作った。鳳の鳴くのを聴いて、雄の鳴きを六、雌の鳴きを六に聞き分け、それを参考に音階の基本音を定めた。陰陽それぞれ六、合わせて十二の音階を定め、自然の精気と響き合うか観察した。また音階ごとに十二の鐘を鋳て、和音を響かせた。

十八史略・訳注

黃帝:伝説上の帝王。文学・暦法・音楽・医薬などをはじめてつくった人とされる。のち、五行説で土・中央を支配する神とされた。軒轅氏ともいわれるのは、軒轅(現河南省新鄭県)の丘にいたとされることから。また、ながえの高くはねた車を考案したとされることから。
黄帝

姬姓:姫は周王室の姓でもある。

有熊國:現河南省にあったとされる空想上の国名。

干戈:さすまたとほこ。あるいはたてとほこ。戦争のこと。

不享:”服従しない者”。享は「祈りや接待の気持ちを相手に通じさせる、また、その気持ちをすなおにうけ入れるの両方の意を派生した」と『学研漢和大字典』に言う。

また『漢語林』には不享を、「指不來朝者。 《史記·五帝本紀》:“於是 軒轅 乃習用干戈、以征不享。” 司馬貞 索隱:“謂用干戈以征諸侯之不朝享者。” 唐 皮日休 《九夏歌·納夏》:“征彼不享、一烘而泮。”」という。

伐ったのが黄帝自身に服従しない者か、当時の王である炎帝にか、はっきりしないが、編者の曽先之の心象風景では、おそらく炎帝に従わない者だろう。なら何であとで王位を奪ったのかと言いたくなるが、それを大人の事情として呑み込むのが中国史というものである。

蚩尤:古代、伝説上の黄帝時代の豪族。兵乱を好み、乱暴で、黄帝に滅ぼされたという。
蚩尤

指南車:かつては磁石を使った方位を示す車とされたが、実在の指南車は車輪の動きに連動して定まった方角を示す機構であるらしい。習い事の教授を「指南」というのはこれが由来。
指南車

河圖(河図):音カト。中国の古代の伝説で、太古の伏羲のとき、黄河からあらわれた竜馬の背に描いてあったという図。易の八卦の根本となった。「竜図」とも。

斗建:斗は北斗星、建は立つことで、北斗星の指す方角。

甲子:十干十二支のこと。

嶰谷:音カイコク。嶰も谷も”たに”。崑崙山の北の谷と解するのは、妄誕(たわごと)に過ぎない。

十二律:音楽の十二の調子。陽のリク律:黄鐘・太ソウ・姑洗・ズイ賓・夷則・エキと、陰の六呂:大呂・夾鐘・仲呂・林鐘・南呂・応鐘をいう。

筩:音トウ。原義は竹筒。笛のこと。

宮:五音の一つ。古代中国の音楽で、階名をあらわす。七音のドにあたる。

五音:宮・商・角・・羽。

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コメント

  1. 十八子略探してました、助かります。万歳万歳万歳!